脳の使い方を授けることが最良の 人材育成
全ての人間は原始脳を持っています。
原始脳は動物脳とも呼ばれ、本能と深い関わりがあります。
原始脳の目的は命を守ること、そして精神を安定させることです。
その目的のため、私たちは本能的に不安や不快を嫌います。
同時に本能的に安心と心地良さを求めます。
ほとんどの犯罪の動機には不安や不快から逃れ、安心と心地良さを求めるという脳の持つ欲求が関わります。
命を守るために、精神を安定させるために進化させてきた脳の働きが、現代社会では逆に生きづらさを作っています。
特にビジネスにおいては、この脳の働きが大きな障害にもなり得ます。
というのも、原始脳は瞬間瞬間の判断はするものの、長期的な展望はできないからです。
原始脳のデメリットを知り、積極的に集中して考えることが出来れば、脳は信じられないほどのパワーを発揮します。
このパワーを授けることが、最良の 人材育成だと考えています。
原始脳が優位に立つと出てくる反応
面倒くさがり
動くとお腹がすくからなのか、じっとしている方が命を守るために都合がいいのかは分かりませんが、ほとんどの人はエネルギーを無駄に使うのを本能的に嫌います。
そのためほとんどの人は面倒くさがりです。
何かと理由をつけて動くまいとします。
何かをやろうと決めても、いつの間にか原始脳の決定に負け挫折してしまいます。
いわゆる三日坊主というやつですね。
現代の日本では多くの場合食料に困ることはありません。
だから多少エネルギーを使ったとしてもたちまち命に関わるような危機はありません。
にもかかわらず実に多くの人は面倒くさがりです。
ビジネスにおいてこの面倒くさがりという性質は時に致命的なミスを引き起こします。
厄介なのは多くの人は自分は面倒くさがりではないと思っていることです。
脳の、やりたくないという決定を受けて、思考はその理由付けをします。
面倒くさくてやらないんではなくて、それなりの理由があるからやらない、と自分の都合の良いように正当化してしまいます。
面倒くさいという脳の決定に逆らうには、ご褒美が必要です。
脳の持つ基本的欲求の不安や不快から逃れようとする働きよりも、安心や心地良さを求める働きのほうが優位だからです。
人によって何がご褒美になるのかはいろいろですが、ご褒美の魅力が勝ったとき面倒くさいという脳の決定に逆らった思考や行動をすることが出来ます。
考えない
面倒くさがりと同じ理由から、多くの人は考えることを嫌います。
28. 脳で消費されるエネルギーは成人男子で1日約500kcal。体全体の消費エネルギーの20%にあたる
29. 脳には体全体に流れる血液量の約15%が運ばれ、全身の酸素量の約20%を消費している
30. 人間の脳の質量は体重の2%程度
https://toyokeizai.net/articles/-/175811?page=2
引用元
東洋経済オンライン
体重のわずか2パーセントしかない器官が全体の20パーセントのエネルギーを消費するわけですから、進んで脳を使いたくないのは本能的に当たり前のことです。
できるだけ脳を使わないように、何かの情報に触れたとき、多くの人の脳内では経験と価値観に従って最良と思われる答えを瞬時に導き出し、思考に伝えます。
思考はそれを受けて言動を決定します。
問題なのは、
脳にとっての最良の答えが、多くの場合自分にとっての最良の答えではないということです。
なぜなら、脳の答えは前提として、
不安や不快から逃れ、安心と心地良さを求めるという脳の欲求を持っているからです。
脳の欲求に従うと、新しいことに挑戦するという思考やリスクを抱えるという思考は困難になります。
しかも忙しさを不快に感じるので、前例の踏襲どころか、前例の手前で良しとする思考になりがちです。
面倒くさがりと同様、多くの人は自分はよく考えていると思っています。
ところが、原始脳が優位になっている人が考えるのは、
自分を正当化すること、そして言い訳、次が脳の決定に対する理由付け、そして想像の中での復讐、といったところでしょうか。
これではなかなか良いアイデアは出てきません。
考えないという脳の性質に逆らうにもご褒美が効果を発揮します。
やはり人によって何がご褒美になるのかはいろいろですが、ご褒美の魅力が勝ったとき考えないという脳の性質に逆らった思考が可能になります。
認知バイアスという脳の持つ厄介な技
バイアスから逃れることはできない
思い込みや判断のバイアスは、本来は判断にかかる時間や情報処理を節約しようとすることから生まれてきたものと考えられます。相手に対する情報が少ないときには、私たちは外見や第一印象を手がかりに性格や特徴を推測しようとします。論理的錯誤やステレオタイプなどはそうした推測判断といえます。
こうした判断には私たちの経験則も含まれているので、必ずしも間違いとはいえない面もあります。しかし、こうに違いないという思い込みが働くと、相手の持っている本来の特性・特徴を見逃してしまうことにもなりかねません。
では、思い込みや判断バイアスを防ぐには、どうすればよいでしょうか。残念ながら完全に防ぐ方法はありません。私たちはさまざまな情報を手がかりに相手を判断しますが、その中には多かれ少なかれ、思い込みや認知バイアスが混入するものです。大切なことは、そうした混入があるということを知っていることです。
例えば錯視は、それが錯覚であることを知っている場合でも、どう見てもそうにしか見えません。しかし、それが錯覚であることを知っている場合と知らない場合とでは、それを見る私たちの心持ちや態度は違ってきます。
東京未来大学 教授・学長 角山剛 記
引用元
面倒くさがりとは自分で思わない、考えていないと自分では思っていない、自分では言い訳をしていると思っていない、自分は働き者だと思っている、などなど自分に都合の良い評価を自分に認識させるのが認知バイアスという脳の持つ性質です。
だから、面倒くさがるのはやめよう、もっと考えようと言っても、全くと言っていいほど伝わりません。
ではどうすれば伝わるか考えてみましょう。
安心と心地良さを提供する
脳の
不安や不快から逃れたい
安心と心地良さを得たい
という基本的欲求に沿うことが人にとっての最大のご褒美になります。
職場環境を整えるのは不安や不快を軽減させる効果があります。
何に不安や不快を感じているのかをまず確認しましょう。
人間関係の不安や不快も原始脳から生み出されます。
これらも原始脳の特徴が理解できると必ず軽減できるものです。
不安や不快が軽減されたら次は安心と心地良さの提供です。
すべての人にとって、安心は大きなパワーを与えてくれるものです。
例えば上司が「責任は俺が取る」といえば部下は挑戦をすることができます。
認める、褒めるということは心地良さを提供することにつながります。
心地良さもパワーを生みますから大きな成果につながります。
さらに心地良さは習慣性を持っていますから、さらなる心地良さを求めるようになります。
ほとんどの人の思考は脳にコントロールされていますから、直接思考に働きかけても、それほどの効果は望めません。
お伝えしたように、原始脳の持つ基本的欲求にアプローチ(不安や不快を軽減させ、安心と心地良さを提供する)することで多くの人は気持ちに余裕が生まれます。
気持ちに余裕ができると思考も余裕ができます。
そうなって初めて、人は自分の持つ力を十分に発揮できるようになります。
動物脳から人間脳へ
多くの人は原始脳から生み出される脳の欲求に従って生きていますので、思考の対象は自分です。
脳の欲求を理解し集中して考えることで、思考の対象が自分以外のものに広がります。
そうなると自然に誰かの役に立ちたいと思うようになり、誰かの役に立つことを喜びと感じるようになります。
自分の取り組む仕事に喜びを感じられる人に育てることこそ経営者の責務だと思っています。
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