「何もしたくない」「起きるのもしんどい」「考えるだけで疲れてしまう」。
そんな日が続くと、多くの人は自分にこう言います。
「私は怠けているんだろうか」
「他の人は頑張っているのに」
「私だけ立ち止まっている……」
しかし、まず最初に伝えたいことがあります。
この状態は、あなたの意志が弱いからではありません。
そして、あなたの性格が問題なのでもありません。
この「何もしたくない」という感覚は、心理学・脳科学の観点から見ると、脳の防衛反応として理解できます。
人間の脳には、生存のために「危険を回避し省エネルギーを優先する機能」が備わっています。
その機能が強く働いたとき、私たちは「働く/考える/動く」よりも、止まること・守ることを選びます。
この記事では、
・なぜ動けなくなるのか(原因)
・これは甘えか、病気の可能性か(判断)
・どうすれば少しずつ回復できるのか(対処)
を、カウンセラー視点で優しく整理していきます。
焦らず、一息つきながら読んでください。
読むことそのものが、すでに回復の始まりです。
なぜ「何もしたくない」と感じるのか|脳の仕組み
「動きたいのに動けない」「やらなきゃいけないのは分かっているのに…」
そんな葛藤を抱える人は多くいます。
そして、ほとんどの人が最初に思うのは、
「私は心が弱いのかな…?」
「怠け癖があるのだろうか?」「なぜ気力が湧かないのだろう」
という自己否定です。
しかし、心理学・脳科学の視点から見ると、
“何もしたくない状態”は偶然起きたのではなく、脳が意図して起こしている反応です。
つまり、
あなたがダメだから動けないのではなく、
脳が「今は止まる方が安全」と判断しているから動けないのです。
この章では、その仕組みを3つの脳機能から解説していきます。
原始脳の「危険回避モード」
人間の脳には、大きく分けて次の二つのシステムがあります。
| 脳の種類 | 役割 | 例えるなら |
|---|---|---|
| 原始脳(生存本能) | 危険回避・命を守る | 警報装置 |
| 思考脳(前頭前野) | 計画・思考・判断 | 司令塔・経営者 |
原始脳は、進化の歴史の中で最も古い領域で、
私たちが生き延びるために常に「危険」を探しています。
原始脳の最優先ルールは命の安全確保」。
そのため、ストレス・過労・不確実性・プレッシャーが続くと次のように判断します。
「動く=危険。止まる=安全」
その判断が私たちの心にこう響きます👇
- 「何もしたくない」
- 「動かなくていい」
- 「面倒くさい」
- 「あとにしよう…」
これは怠慢ではありません。
脳が省エネモードに切り替えているだけです。
加えて、基本私たちは省エネモモードです。
食べ物が十分に手に入らなかった時代の名残ですね。
できるだけエネルギーを使わないようにするのが当たり前なのです。
三日坊主という言葉がほとんどの人に思い当るのがその証拠です。
📌 事例(20代・学生)
大学2年生のAさんは、授業・サークル・アルバイトと忙しい生活を送っていました。
最初は充実感がありましたが、徐々に
「朝起きられない」「好きなことも楽しくない」「気分が重い」と感じ始めました。
Aさんはこう語っていました。
「怠けてるだけなんじゃないかって、自分が嫌になっていた。」
しかし話を聞くと、生活リズムの乱れ・睡眠不足・ストレス・将来不安が重なっていて、
脳はすでに負荷の限界サインを出していました。
これは身体を守るための反応だったのです。
前頭前野の機能低下による意思決定困難
私たちが「決める」「行動する」「考える」ために働くのが、脳の司令塔である前頭前野です。
ところが、次の状況が続くと前頭前野の活動は低下します👇
- 睡眠不足
- 長期ストレス
- 過剰なプレッシャー
- 感情疲労
- 情報過多
すると、こんなことが起こります👇
- 決められない
- 何から始めればいいか分からない
- 小さな作業でも重く感じる
- 考えるだけで疲れる
つまり、
「やる気がない」のではなく、脳が意思決定できない状態
になっているのです。
📌 例:仕事を辞めるか迷う30代男性
会社での人間関係に悩み、退職を考え続けている男性がいました。
彼はこう言いました。
「考えても考えても答えが出ない。
なのに、行動しようとすると体が止まるんです。」
これは矛盾ではなく、
前頭前野が疲弊して判断力が低下していた状態です。
行動できないのは、意思の問題ではありません。
脳が処理能力を落としているだけです。
DMN(デフォルトモードネットワーク)と反芻思考
脳には「ぼーっとしている時に働くシステム」があります。
それが DMN(デフォルトモードネットワーク)。
本来これは創造性や休息に役立つ働きですが、
疲れていたり不安が強い人では、次のように作用します👇
- 過去の失敗の反芻
- 未来の不安ばかり想像
- “もし○○だったら…”のシミュレーション
- まだ起きていない心配
そして、DMNが強く動くほど脳は次の結論に向かいます👇
「動かない方が安全」
デフォルトモードネットワーク(DMN)とは?あなたのひらめきを支える、あえて「集中しない」という選択肢 – 東京報道新聞
つまり、
- 考えるほど行動できない
- 行動できない自分を責める
- さらに脳が緊張し動けなくなる
という 悪循環ループが起きるのです。
📌 例:休日にSNSだけ見て終わる人
「休日はやることがあるのに、SNSを見て終わってしまう」
これは意思が弱いのではなく、
SNSという簡単に刺激が得られる行動がDMNの活動と結びつき、
脳が最小エネルギーで快適さを得る選択をしているためです。
原始的な脳は安心とともに、心地よさを求めます。
そのせいで、何かに依存してしまうのです。
🔍 このセクションのポイントまとめ
- 「動けない」は脳があなたを守っているサイン
- 原始脳がエネルギー温存を命令している
- 前頭前野が疲れると決断・行動機能が止まる
- DMNが過剰に働くと「考えるほど動けない」状態になる
承知しました。
条件すべて反映し、温度と余白のある文章で進めます。
では、指定のブロックを書きます👇
これは甘え?病気?それとも脳疲労?|判断基準
動けない自分に気づいたとき、多くの人がまず最初に迷うのはここです。
「これは休んだほうがいいサインなのか」
「それとも甘えているだけ?」
「病院に行くべき状態なのか?」
この境界線は、とても曖昧です。
心はチェックリストや数値では割り切れません。
人によって強さも違うし、同じ人でも時期によって変わる。
だからこそ、ここでは“正解を決める”のではなく、
状態を理解し、自分の心を扱いやすくするための視点を置いていきます。
あなたが今、どこに立っているのか。
一緒に静かに確認していきましょう。
一時的な脳疲労の特徴
まずは、よくある「脳が疲れているだけ」の状態から。
これは、誰にでも起こります。
人間関係が続いた日、締め切り前、季節の変わり目。
理由はいつも派手ではなく、じわじわ蓄積するものです。
たとえば…
- 眠いのに眠くならない
- ため息を何度もつく
- SNSや動画を無意識に開く
- なぜか部屋が散らかり始める
- 人と話すのが面倒になる
- 「あとでやる」が癖になる
もし、思い当たるものがあれば、それは身体より先に脳が疲れているサインかもしれません。
私のクライアントさんに、こんな人がいました。
「仕事はできているのに、休日になると一日中スマホで動画ばかり。
何も生産できていない気がして、罪悪感だけが溜まるんです。」
その人は、真面目で責任感が強いタイプでした。
脳はフル回転。
でも、その反動で休みの日は“思考のスイッチが落ちる”。
脳疲労の特徴は、
やりたい気持ちがゼロではなく、「あるけど体が動かない」状態になること。
あなたにも心当たりがあるでしょうか。
うつ・バーンアウトのサイン
ここからは、少し慎重に触れたい部分です。
“ただ疲れているだけ”と
“治療や専門的な支援が必要な状態”には境界があります。
もちろん、この文章だけで断定はできません。
でも、目安として知っておくことは、自分を守ることにもなります。
次のような状態が2週間以上続いている場合、
専門家につなぐ選択肢を考えて良い時期かもしれません。
✔ 眠れているのに疲れが取れない
✔ 食欲が極端に減る、または増える
✔ 喜びや楽しみが感じられない
✔ 人と話すのがしんどい
✔「自分には価値がない」と感じる瞬間が増えた
✔ 日常の動作(歯磨き、洗濯、返信)が重くて仕方ない
バーンアウト(燃え尽き)の場合は、少し違う特徴があります。
- 以前は当たり前にできていたことが突然できなくなる
- 仕事や家事を想像するだけで呼吸が浅くなる
- 「何もしない」のではなく「何もできない」に近い感覚
- 感情が消えたような空虚感
ある人はこう言いました。
「心が消しゴムで薄くこすられたみたいに、何も感じられないんです。」
もしこれに近い感覚があるなら、
それはあなたが弱いのではなく、
それだけ頑張り続けてきた証拠です。
原因別のパターン分類
ここで、少し視点を整理してみましょう。
「何もしたくない」状態には、背景があります。
いくつかの傾向に分けてみると、自分の状態が少し見えやすくなります。
① ストレス由来型
仕事、家庭、学校、人間関係。
ストレスが続くと、脳はブレーキをかけます。
ストレスは雨漏りのようなもの。
ひとつでは壊れない。でも、積み重なった時に歪みが出る。
② 気力低下型
目標が曖昧だったり、将来が見えないとき。
心のガソリンが入らず、前に進む理由がなくなる状態です。
「頑張る理由が見つからない。」
そんな声も、実は自然な心の反応です。
③ 環境影響型
騒音、寒さ、光、散らかった部屋。
環境は意外と心に大きな影響を与えます。
居場所が落ち着かないと、脳はフル稼働し続けて消耗します。
そして、「何もしたくない」に変わります。
④ 思考癖・感情パターン型
完璧主義、自責思考、比較癖。
これらは、脳内で常にエネルギーが消費される思考です。
たとえば、何か始める前に
「失敗したらどうしよう」
「できない自分が怖い」
そう感じることはありますか?
脳は“行動する前に疲れ果てる”ことがあります。
🌿今日からできる行動を1つ
深呼吸をひとつだけ。
何かを始めなくてもいい。
環境を変えなくてもいい。
ただ、ゆっくり息を吐いて、吸う。
それだけで、脳は「少しだけ安全」だと認識します。
すると、思考も感情も少し緩みます。
💬最後にひと言
動けない自分に、厳しくしなくて大丈夫です。
今は、ブレーキが必要な時期なのかもしれません。
あなたは今、ちゃんと生きています。
それでいいと思います。
どうしても不安でたまらなければ、
私の理論で理解する|脳が行動を止める理由
ここまで「何もしたくない」という状態が、意志や性格ではなく脳の反応だと見てきました。
ここからは、もう少し踏み込み、私の理論の視点で理解していきます。
あなたの中には、少なくとも2つの“脳の声”があります。
ひとつは、
生き延びるために働く脳——原始脳。
もうひとつは、
考え、選び、未来をつくる脳——思考脳。
どちらもあなたの一部です。
どちらかが「正しい」「間違っている」のではなく、
ただ、役割が違うだけ。
動けない日があるのは、あなたが壊れているからじゃない。
脳が「まだ走るタイミングじゃない」と判断しているだけです。
その仕組みを、もう少し優しく、整理していきます。
原始脳=生きるための警報装置
私の理論では、原始脳を“警報装置”に例えています。
火災報知器は、火事が起きなくても作動することがありますよね。
焦げたパン、熱いシャワー、ホコリ……
それらは本物の危険ではないのに、装置は鳴ります。
原始脳もそれと同じ。
本当に危険な場合だけでなく、
「危険かもしれない」状況にも反応します。
例えば…
- 新しい仕事
- 人前で話す予定
- 先が読めない人生の選択
- 苦手な人との予定
- 未経験の挑戦
これらはすべて「命の危険」とは関係ありません。
でも原始脳にとっては違います。
未来が読めない
↓
予測不能=危険
↓
行動停止モードへ
こうして、
本当は前に進もうとしている“あなた”とは裏腹に、
脳は体にブレーキをかけます。
ある女性がこんな言葉を口にしました。
「やらなきゃいけないことが迫ってくると、
体の内側からそっと“止まれ”って声が出るんです。」
その声の正体こそ、原始脳です。
あなたを責める声ではなく、
あなたを守ろうとしている声なんです。
思考脳が働き出すのは「安全が確認された後」
では、動きたいのに動けない状態からどう抜けていくのか。
ここで鍵になるのが、思考脳(前頭前野)です。
思考脳は、
- 物事を整理する
- 選択肢を比べる
- 行動の意味を理解する
- “未来志向の判断”をする
そんな役割を持っています。
ただ、ひとつ条件があります。
思考脳は——
「安全な状態」でなければ動きません。
ストレス下、緊張、恐怖、不安、焦り。
そのような状態では、
思考脳は沈黙し、原始脳が前に出ます。
では、思考脳が再び働き出す瞬間とは、いつでしょうか。
それは、
脳が「大丈夫」と感じたときです。
方法は難しいものではありません。
むしろ、とてもシンプル。
・深くゆっくり呼吸する
・体の力を抜く
・頭の中の考えを書き出す
・「今、どう感じている?」と自分に問う
すると、脳にこんなメッセージが送られます。
「今は戦闘モードじゃない。」
「ここは安全。」
これがスイッチになります。
やがて、整理する力や、選ぶ力、行動への意欲が少しずつ戻ってきます。
先ほどの女性は、こう言いました。
「動けない日、今日は深呼吸だけしようって決めたんです。
すると翌朝、少しだけ机に向かいたい気持ちが戻っていました。」
それは奇跡ではなく、
脳が安全を感じ、思考脳が再起動した瞬間です。
🌿ここでひとつ、自分にそっと問いかけ。
今のあなたは、
「動かなきゃいけないから動けない」のか、
「まだ安全確認が終わっていないから動けない」のか。
心の中で、ゆっくり確かめてみてください。
🌙今日できる小さな行動
深呼吸を3回。
胸ではなく、お腹で。
息を吐く方を長く。
それだけでいい。
脳はそれを「安心のサイン」と受け取ります。
💬最後にそっと
あなたが止まっているように見える時間も、
脳はちゃんと整理し、守り、回復しています。
それを後押しするのが「人生を楽しもう」とする心構えです。
人生を楽しもうとしているとき、原始脳より思考脳が優位に働いているからです。
あわてなくて大丈夫。
動く準備は、静かなところで進んでいます。
…そのままで。
ゆっくり、進めばいいと思います。
今日からできる「脳を安心させる行動」
ここまでの流れで、
「動けない自分は弱いのではなく、脳が守りモードに入っているだけ」
という視点が少し育ってきたと思います。
では、ここから——
脳が安心し、再び思考脳が戻ってくるための“小さなスイッチ”を置いていきます。
どれも「努力」ではありません。
頑張らなくていい行動です。
むしろ、力を抜くことが前提です。
焦らず、自分のペースで読んでください。
① ただ深呼吸する(判断しない)
深呼吸は単なるリラックス方法…と思われがちですが、
脳の視点で見ると意味が変わります。
呼吸が浅いとき、身体は「危険が近い」と判断します。
息が荒くなる動物と同じ原理です。
逆に、深く息を吐いたとき——
身体は、
「今は逃げなくていい」
「安全だ」
と解釈します。
難しいことは何もしなくていい。
ただ、ゆっくり息を吐いて、吸う。
そして、途中で思考が横から入ってきても、追わない。
判断しない。意味づけしない。
たとえば、
「こんなんで意味があるのかな?」
「呼吸してるだけじゃ変わらないよね?」
そんな声が出てきても、大丈夫です。
それすらも脳の反応。良い悪いではありません。
ただ、淡々と呼吸だけ続ける。
その時間が、思考脳の再起動準備になります。
② 1ミリ行動法(始めるより小さく)
「やらなきゃ」と思うほど、動けなくなる日があります。
その理由は、原始脳が“行動=大量のエネルギーと危険”と結びつけてしまうから。
ここで有効なのが、1ミリ行動。
- 机に向かう
ではなく
→ ペンを手に触れる。 - 部屋を片付ける
ではなく
→ ゴミを1つ捨てる。 - 散歩に行く
ではなく
→ 靴を玄関に出す。
行動というより、「方向を向く」程度でいい。
それでも脳はこう判断します。
「あ、動けた。」
この“成功体験の最小単位”が、
次の行動スイッチにつながります。
ある方は、こう言いました。
「行動したくない日は、洗濯ものを畳まない。
でも床に投げず、洗濯かごの中にだけ入れることを目標にしました。」
それで十分。
行動のサイズを1ミリにすると、原始脳のブレーキが弱まります。
③ 「休むことを肯定する宣言」
脳は、言葉にも反応します。
特に“内側の声”は、身体感覚に影響します。
休むことに罪悪感がある人ほど、こんな声を持っています。
「休んでいる自分はダメだ。」
「動かないのは逃げている。」
この言葉こそ、原始脳をさらに緊張させてしまうもの。
だから、意図的に言葉を変えます。
たとえば、
「今は休む時間。」
「回復することも行動のひとつ。」
「止まっているように見えるけれど、私は整理の途中。」
最初は信じなくていい。
ただ、口に出すことが大切です。
言葉が変わると、脳は次第に
「今は安全」
と理解し、力が抜けていきます。
④ 睡眠・環境・栄養のミニ調整
行動を変える前に、環境を整えることはとても有効です。
脳は環境に影響されるからです。
・寝る前のスマホ時間を10分減らす
・部屋の光を柔らかくする
・小さいタスクだけ先に片づける
・水を一杯飲む
・食事を抜かない
こうした行動は、原始脳にとって「安心の証拠」になります。
たとえば、
朝にカーテンを開けただけで気分が少し上向く経験、ありませんか?
それは気分ではなく、脳が反応しているのです。
光→体内時計→自律神経→行動意欲
この流れが自然に働きはじめます。
⑤ “人生を楽しむ視点”が思考脳を動かす
私の理論の核にあるメッセージがあります。
人生は楽しんでナンボ。
これは軽い言葉ではありません。
脳科学的にも意味があります。
原始脳は「危険監視」が役割。
未来を守るために不安やリスクに焦点を当てます。
一方、思考脳は——
希望・好奇心・創造・選択と結びついています。
つまり、
「やらなきゃ」より
「これできたら楽しそう」が脳を動かす。
たとえば、
- 片づけ→「きれいにしたら心地よさが増える」
- 散歩→「外の空気を吸ったら気持ちいいかもしれない」
- 仕事→「できたら自信になりそう」
動機が「義務」から「喜び」にシフトすると、
原始脳の警戒は弱まり、思考脳が前に出てきます。
小さくてもいい。
“楽しむ方向に視点を向けること”
それだけで、行動曲線は変わっていきます。
🌿今日できる小さな行動
呼吸しながら、こう呟いてみてください。
「いまの私は、このままでいい。」
言葉にするだけで、
脳の緊張がほどけ、行動の余白が生まれます。
回復の道のり|急がなくていい理由
「早く元に戻りたい」「普通に動けるようになりたい」
そんな気持ちが出てくる時期があります。
そして同時に、
「この調子のまま抜け出せなかったらどうしよう」
という不安も顔を出す。
その感情は決して特別なものではありません。
むしろ、それは回復がすでに始まっているサインでもあります。
体と脳が疲れているとき、
私たちはどうしても「スピード」を求めがちです。
けれど、脳の回復は筋肉や体力とは違う仕組みで動いています。
回復は、努力や根性で押し進めるものではありません。
もっと静かで、ゆっくりしたプロセス。
小さな芽が表面には見えなくても、
土の中で確かに根が伸びているようなものです。
脳は安全を確認すると自然に動き出す
脳が行動を止めていたのは、
あなたを守りたかったから。
そのブレーキが外れる条件はひとつだけ。
「安全だ」と確認できたとき。
安心は、行動の燃料です。
不安や焦りのまま自分を追い立てても、
原始脳は「まだ危険かもしれない」と判断し続けます。
逆に、安心を積み重ねていくと——
脳はゆっくり、そして自然に、
思考・判断・行動のスイッチを戻していきます。
これは「無理にやる」「頑張って戻す」こととは違います。
春になれば雪が解けて、自然と芽が出るような流れに近い。
私の相談者さんの中に、こんな方がいました。
数ヶ月間、何をしても疲れてしまい、
家の中で過ごすことしかできなかった時期があった人です。
ある日、彼女はふとこう話しました。
「最近、急に『コーヒーが飲みたい』って思ったんです。
理由はないけど、体が外に出たいって言ったんです。」
それは小さなことに見えるかもしれません。
けれど、その変化は、
“安全が戻り、脳が活動再開の準備を始めた”証拠。
行動は、意志や気合からではなく、
安心から生まれます。
行動が戻ってくるサイン
回復が始まるとき、
大きな変化が突然現れるわけではありません。
むしろ、そのサインは見逃してしまうほど小さい。
たとえば、
- 昨日より少し早く布団から出られた
- 外の空気が「気持ちいい」と感じた
- 好きだった音楽をまた聞きたいと思った
- ほんの一瞬「やってみよう」と思える瞬間があった
- 未来の話を浮かべても、心が重くならなかった
こうした変化は、数字では測れません。
でも、とても大切な合図です。
もしそのサインを感じたなら、
こんなふうに自分に言葉をかけてみてください。
「動こうとしてる。」
「私の中で何かが戻ってきている。」
「急がなくていいけど、進んでる。」
ある人は、回復の実感をこう表現しました。
「前は、世界が灰色に見えていたんです。
最近、ほんの少しだけ色が戻ってきました。」
脳が整い始めると、
世界の見え方、感じ方、言葉の選び方が変わります。
それは「頑張った結果」ではなく、
自然に戻ってきたあなた自身の感覚。
🌿今日できる小さな行動
小さな変化に気づくこと。
できたことではなく、
“戻ってきた感覚”をひとつだけ探す。
「昨日よりコップの水が美味しく感じた」
そんなことで十分です。
💬最後にそっと
あなたは止まっているように見えて、
内側では確かに前へ進んでいます。
回復に速さはいりません。
タイミングは、あなたの心と脳が知っています。
焦らなくていい。
ゆっくりで、ちゃんと大丈夫です。
避けたい思考と行動|知らずに脳を疲れさせてしまうこと
回復していく途中には、「やらないほうがいいこと」も存在します。
ただ、誤解しないでほしいのは——
「ダメだから避けろ」と言いたいのではなく、
“脳が休もうとしている時期に負担になるものがある”というだけです。
人は疲れているときほど、
無意識に自分を追い詰める行動を選んでしまいがちです。
それは弱さではありません。
脳が“なんとかしなきゃ”と焦っている証拠です。
ここでは、よくある3つのパターンを
「責めない視点」とともに整理します。
① 自分を責め続けること
動けない自分を見て、
心の中でこんな言葉が出ていませんか?
「怠けているだけじゃない?」
「他の人は頑張ってるのに。」
「情けない。」
「前の私はもっとできたのに。」
こういう言葉は、
一見“自分への喝”のようですが、
脳科学的には逆効果です。
責められた脳は緊張し、
交感神経が働きます。
すると原始脳がこう判断します。
「危険だ。守らなきゃ。休め、動くな。」
本来は行動したいのに、
言葉によって脳が再び防衛モードに入るんです。
ある女性は、
休んでいる自分を許せなくて、
毎晩ノートに反省を書いていました。
「今日もできなかった。私は弱い。」
「次こそ頑張らないと。」
だけど、話を聴くうちに、
ふと涙をこぼしてこう言いました。
「あ…そう言えば“よく頑張ったね”って言ってなかった。」
その瞬間から、呼吸が深くなり、
表情が柔らかくなっていきました。
責める代わりに、ひとつ優しい言葉を。
脳はそのほうが回復が早いんです。
② 比較すること・情報を探し続けること
疲れている時期ほど、
SNSやネット検索の沼に落ちやすくなります。
- 「あの人は頑張っている」
- 「同年代なのに追いつけない」
- 「みんな普通に働いているのに私だけ」
スクロールすればするほど、
自分の価値を過小評価しやすくなります。
さらに情報は無限です。
不安なときほど検索は止まりません。
「この症状は何?」
「休むべき?動くべき?」
「私は間違っている?」
検索すればするほど、
DMN(考えすぎ回路)が強く働き、
脳は疲れ、動けなくなります。
悪気はないんです。
「答えを探す」という自然な行動なんです。
ただ、脳が弱っている時期には、
情報は安心より焦りを増やすことがあります。
もし気づいたら、
そっとスマホを置いて、
深呼吸を一回してみてください。
それでいいんです。
③ “元の自分に早く戻ろうとする”こと
これは、多くの人が必ず通るものです。
そして、とても苦しい考え方でもあります。
「前の私はもっと動けたのに」
「なんで今はできないの?」
「あの状態に戻りたい。」
この「戻ろうとする感覚」は、
脳にとってはプレッシャーです。
原始脳は、
「またあの負荷が来るんだ」と解釈し、
さらにブレーキを強めます。
不思議なことですが、
回復は“戻る”のではなく、“変わる”プロセスなんです。
以前のあなたに戻る必要はありません。
疲れを経験し、
弱さを感じ、
休むことを知ったあなたは、
もうすでに前とは違うステージにいます。
あるクライアントさんが
回復の終わり頃に言いました。
「戻れなかったけど…戻らなくてよかった。
今は、前より優しく生きられる。」
その言葉を聞いたとき、
私は心の奥がじんわり温かくなりました。
あなたにも、きっとそういう日が来ます。
🌿今日できる小さな行動
ひと言だけ、自分にかけてみてください。
「大丈夫、焦らなくていい。」
声に出しても、心の中でもいい。
その言葉ひとつで、
脳は安心し、回復のスピードが変わります。
——そのままで、大丈夫です。
自分の状態を知るミニワーク
ここまで読んでくださったあなたは、きっとどこかで、
「結局、今の自分はどれくらい疲れているんだろう?」
「もう限界なのか、まだ頑張れるのか分からない」
そんな感覚を持っているかもしれません。
脳や心の状態は、体温計のように数字で測れません。
だからこそ、「なんとなく不調だけど、はっきり言語化できない」状態になりやすいんですね。
ここでは、あなた自身の状態をやさしく確かめるための
ミニワークを用意しました。
テストや診断というより、
「自分と静かに対話してみる時間」くらいの気持ちで読んでみてください。
紙とペンがあると、より効果的です。
スマホのメモでも大丈夫ですよ。
今のフェーズチェック
まずはざっくり、
あなたが今どのフェーズにいるのか、3つのイメージで見てみます。
- ① 赤信号:とにかく止まるフェーズ
- ② 黄信号:ゆっくり様子を見るフェーズ
- ③ 青信号:少しずつ動き出すフェーズ
完璧にどれかひとつに当てはまる必要はありません。
「あ、今はこれがいちばん近いかも」くらいでOKです。
■ ① 赤信号:とにかく止まるフェーズ
- 布団から出るのに、かなりエネルギーがいる
- 人と話すこと自体がしんどい
- 好きだったことにほとんど興味がわかない
- 予定のことを考えるだけで、胸がぎゅっと重くなる
こういう状態が続いているなら、
脳は「今は完全に守りモード」と判断している可能性が高いです。
このフェーズでは、
「どうにか動かなきゃ」より
「止まっている自分を責めないこと」
がいちばんのケアになります。
■ ② 黄信号:ゆっくり様子を見るフェーズ
- 仕事や家事はなんとかこなしている
- でも、休日はほとんど動けない
- 気分の波が大きく、調子のいい日と悪い日が極端
- 未来のことを考えると不安で、ついスマホに逃げる
これは、
「まだ走れるけれど、オーバーヒート寸前」のような状態。
ここでは、
「少しずつ、自分に優しい選択を増やしていく」
ことが鍵になります。
すぐに全力で動こうとしない方が、結果的に回復が早いフェーズです。
■ ③ 青信号:少しずつ動き出すフェーズ
- 以前より、興味や好奇心が少し戻ってきた
- 行きたい場所、会いたい人が頭に浮かぶことがある
- 何もしない日が続くと、逆に物足りなさを感じる
- 「またやってみようかな」と思える瞬間がある
ここまで来ると、
思考脳がかなり機能し始めています。
とはいえ、
まだフルスロットルで走る時期ではないことも多いです。
「そろそろ完治だ!」と急に走り出すより、
「ペースを見ながら、少しずつ距離を伸ばしていく」
というイメージの方が、リバウンドを防げます。
あなたは、どのフェーズにいちばん近そうでしたか?
一つに決めなくても構いません。
「赤と黄の間かな」「日によって違うな」
そんな揺れ方でも、全然おかしくありません。
3つの問いで心の位置を確認
次に、少しだけ内側を見つめるための「3つの問い」を用意しました。
この問いに、
正解はありません。
大事なのは、
“どう答えたか”ではなく、
「その答えを自分がどう感じるか」です。
よかったら、紙やメモアプリに書いてみてください。
問い①:「いちばんしんどい時間帯は、いつですか?」
朝起きるとき?
仕事へ向かう道?
夜、ひとりになったとき?
布団に入った瞬間?
時間帯を意識すると、
どんな場面で原始脳が騒ぎやすいかが見えてきます。
問い②:「最近、『あ、ちょっと楽になったかも』と思えた瞬間はありましたか?」
ほんの一瞬で構いません。
- 空がきれいだと思えた
- コーヒーがいつもよりおいしく感じた
- 誰かの言葉に、少し救われた気がした
- ふと「これ食べたいな」と思えた
些細なことほど、忘れやすいものです。
でも、その一瞬は 回復の小さな芽 です。
もし何も思い出せなかったとしても、
「今はまだ見つからないんだな」
と受け止めるだけで十分です。
問い③:「今日、自分を一つだけ許すとしたら、何を許しますか?」
- 何もできなかった自分
- 返事を後回しにした自分
- ついスマホを見続けてしまった自分
- イライラしてしまった自分
許すことは「甘やかし」ではありません。
脳にとっては、
緊張を解くスイッチです。
この問いに、
今のあなたは何と答えますか?
書くことで思考脳が起動する理由
ここまで、「書く」というワークをいくつか提案しました。
なぜ、書くことが大事なのか。
それは、原始脳と距離をとるためのシンプルで強力な方法だからです。
不安やモヤモヤを「頭の中だけ」で抱えているとき、
脳内では原始脳とDMN(反芻回路)が会議をしています。
「危ないかもしれない」
「失敗したらどうしよう」
「あの時の自分はダメだった」
頭の中だけで考えていると、
言葉は丸くならず、
感情とイメージが絡まり合ったまま増えていきます。
書き出すことには、こんな効果があります。
- 感情が「文字」に変わることで、少し客観視できる
- 頭の中の“もやもやの塊”が、いくつかの要素に分解される
- 問題と自分が、少しだけ離れた位置に置かれる
これは、思考脳(前頭前野)が働き始めたサインです。
あるクライアントさんは、
ノートにこんなふうに書いていました。
「動けない自分が情けない」
と書いたあとに、
その下に小さく
「…それでも生きているだけでいいのかもしれない」
と付け足していたんです。
書いたからこそ出てきた、
小さな「別の声」です。
これが、まさに思考脳の声。
原始脳の一方的な放送に、
別のチャンネルが現れた瞬間でした。
書く量は、多くなくて構いません。
- 1日1行だけの「気持ちメモ」
- 今日の自分を漢字一文字で表す
- 「いま感じていること」を10秒で書き出す
その程度でも、脳にとっては大きな意味を持ちます。
🌿今日できる小さなワーク
紙でもスマホでもいいので、
たった一行こう書いてみてください。
「いまの私のフェーズは、○○信号っぽい。」
赤でも、黄でも、青でも、
「よく分からない」でもOKです。
その一行が、
あなたとあなた自身との対話の入口になります。
💬最後に、そっとひと言
あなたは怠けているのではありません。
動けないのは、脳が「あなたを守っているサイン」です。
原始脳の声が強いとき、思考脳は働きにくくなります。
だから焦らなくていいんです。
小さな行動・深呼吸・安心感、それが回復のスイッチになります。
明日じゃなくていいし、完璧じゃなくていい。
ただ「今日、自分を責めないこと」。
それだけでも脳は安心し、少しずつ動ける日が戻ってきます。
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