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頭がぐるぐるして止まらない のはあなたのせいじゃない

幸せになる新しい方法

夜になるほど頭が冴えてきて、同じ不安ばかりぐるぐる再生される。
「考えすぎだよ」「気にしすぎ」と言われても、止め方なんて分からない。

気づいたら疲れて、感情も鈍くなっていく。

でも、それはあなたが弱いからではない。
脳には「生き延びるために、危険を何度もチェックし続ける仕組み」がある。

私はそれを「原始脳の過剰反応」と呼んでいる。

この記事では、思考が止まらない理由と、脱出のきっかけになるやり方をやさしくまとめた。

読んでいくうちに、自分を責める気持ちが少しだけ軽くなると思う。

頭がぐるぐるするのは性格ではなく仕組み

頭が止まらなくなる瞬間って、だいたい静かな時間にやってくる。

夜ベッドに入って、明日の予定をぼんやり思い返しただけのつもりが、気づいたら全然関係ない昔の失敗まで出てきて、「なんで今その記憶?」と突っ込みたくなるほど鮮明に思い出される。

こういう時、ほとんどの人は思う。
「私って弱いのかな」「精神力が足りないのかな」「性格が問題なんだよね」と。

でも違う。
これは性格ではなく、脳の仕組み。
永田理論でいうところの、原始脳が「警備モード」に入っているだけ。

原始脳は、現代の生活やスマホや人間関係の複雑さなんて知らない。
彼にとって世界はもっとシンプルで、「油断したら死ぬ世界」のまま止まっている。
だから、あなたの頭がぐるぐるしているとき、脳の奥底ではただ一つの目的だけが動いている。

「あなたを守るため」

そう思うと、少し見える景色が変わる。
責める対象だったものが、必死で守ろうとしてくれている相棒みたいに感じられてくる。
うまくいかないだけで、敵ではない。

原始脳は「最悪の未来」ばかり予測してしまう

原始脳が警戒モードに入ると、未来が全部「最悪シナリオ」の映像で再生される。
面接前なら「落ちる未来」、返信待ちなら「嫌われる未来」、仕事の締め切り前なら「間に合わず評価が下がる未来」。

なぜか、希望や成功の想像よりそっちのほうが圧倒的に早く浮かぶ。

これはあなたがネガティブだからではない。
原始脳はポジティブな未来を想像する必要がなかった。
原始時代、「うまくいくはず」と油断した個体は、襲われたり、病気や気候で命を落とした。

だから原始脳は今でもこう考える。

「最悪の可能性を先に見ておけば、危険を回避できる」

少し極端な例だけど、吊り橋を渡るときに「落ちたらどうしよう」が先に浮かぶのは、そのため。
頭の中のぐるぐるは、原始脳が未来を“予習”し続けている状態なんだと思うと、少し納得がいく。

思考脳は疲れると黙る

原始脳が暴走しているとき、もうひとりの脳…いわゆる「思考脳(前頭前野)」は静かになっていきます。
まるで会議中にテンションの高い人が暴走して、冷静な人が口を挟めなくなる状況に似ている。

例えば、仕事で気を張っていた日。
帰宅してから物事を決めようとしても、妙に決められない。
ご飯に何を食べるかさえ迷ってしまったりする。

それは意志が弱いんじゃなくて、前頭前野が疲れているだけ。
この部分は非常にエネルギーを使う場所で、考える、決める、選ぶ、気を配る…そんな作業が続くとすぐに消耗します。

すると、こうなる。

「判断する余力がない → 原始脳が指揮権を握る → 危険の想像ばかりが浮かぶ → 頭がぐるぐる」

気づいたら、不安と反省と未来予測が混ざった、終わりのない独り言が流れ続けてしまう。

でもこれは、異常ではないと思ってください。
前頭前野が休息しようとしているサインなんです。

つまり、ぐるぐるして動けないとき、自分を責める必要はありません。
「今は脳が疲れているだけ。だから優しく扱おう」
そう思えるだけで、原始脳の警戒音はほんの少し小さくなる。

そしてそれだけでも、そのあとの思考は変わっていくのです。

なぜ止めようと思うほど止まらないのか

「よし、もう考えるのやめよう」
そう決めたはずなのに、数分後にはまた同じ心配を頭の中でなぞっている。
しかも、さっきより細かいところまでえぐっていたりする。

不思議ですよね。
意志の力を使ったつもりなのに、結果はむしろ逆。
これは根性が足りないからでも、メンタルが弱いからでもない。

脳には「意識的に避けようとした情報ほど、無意識が監視する」というクセがある。
白いクマの実験を聞いたことがあるかもしれない。
「白いクマのことだけは絶対に考えないでください」と言われると、逆に頭の中は白いクマだらけになる、あの現象。

原始脳は、「避けられているもの=危険かもしれない」と判断する。
だから、あなたが

「彼のことはもう考えない」
「仕事のミスのことは忘れよう」
「不安を頭から追い出そう」

と決めた瞬間、原始脳は裏側でこうつぶやく。

「え、そんなに避けたいってことは、むしろ重要案件では?」

その結果、「忘れよう」としたテーマを、無意識がずっと見張ることになる。
頭の中の警備員が、ドアの前で腕を組んで監視を始めるイメージに近い。

止めようとすればするほど、ぐるぐるは強くなる。
このねじれた構造を知っているかどうかで、自分への評価はかなり変わってくる。
「止められない私がダメ」ではなく

「止めようとしたからこそ、脳が余計にがんばってしまった」

と見方を変えられると、少しだけ力が抜けてくる。

「考えないようにしよう」がトリガーになる

反芻思考という言葉がある。
一度起きた出来事や不安を、何度も何度も反芻するように考えてしまう状態のこと。
牛が同じ草を何度も噛み直すみたいだから、こう呼ばれている。

例えば、こんな場面。

会議でうまく話せなかった日。
帰り道でふっとその場面を思い出し、「ああ、あそこでもっとちゃんと言えばよかった」と胸がキュッとする。
ここまでは、よくある反省。

そこで

「もうやめよう、考えないようにしよう。切り替え切り替え」

と、自分に言い聞かせる。
ところが、家に着いて一息ついた瞬間、また同じシーンが再生される。
今度は、他の人の表情まで細かくセットで思い出される。
ベッドに入るころには、「きっとあの人は私を無能だと思っている」という物語にまで育ってしまう。

この流れのスタート地点にあるのが、「考えないようにしよう」という一言。

脳の中では、こんな動きが起きているのです。

考えないようにする
→ そのテーマを常に監視する必要が出てくる
→ 監視のために、関連する情報を無意識がかき集める
→ その結果として、細部まで思い出され、よりリアルな映像になる

つまり、「考えないように」が、反芻思考のスイッチになってしまう。

恋愛でも同じだ。
「もうあの人のことは忘れよう」と決めた日ほど、相手のアイコンや、街で見かけた似た後ろ姿にやたらと反応してしまう。
これも、原始脳が

「忘れようとしているその人は、あなたの生存や安心に関わる重要人物では?」

と勝手に判断して、注意を強めているからだと考えると、少し笑えてくる。

私の理論でいうと、

「考えないようにしよう」とした瞬間
→ 原始脳にフラグが立つ
→ 「そこは重要だぞモード」に入る
→ 無意識レベルでそのテーマを追いかけ始める

このループが静かに回り続ける。

だから、本当にやりたいことは、「考えないようにする」ことではない。
「考えてしまっている自分に気づく」「今、原始脳が騒いでいるんだな」と一歩引いて眺めること。

止めようとするほど、脳は暴走する。
逆に、「ああ、また始まってるな」とラベルを貼るだけなら、原始脳はそこまで警戒しない。
ここから先をどう扱うかが、ぐるぐる思考から抜け出す分かれ道になっていきます。

まずやるべきこと

ぐるぐる思考に飲み込まれているとき、多くの人は「解決策を考えなきゃ」と焦る。
問題を整理しようとしたり、未来の不安を消そうとシミュレーションし始めたりする。
でも、その段階ではほとんどの場合、思考は空回りする。

理由はシンプルで、まだ「脳が不安モード」だから。

不安モードの脳は、冷静な判断よりも警戒を優先する。
だからどれだけ考えても、
「これで大丈夫」より
「まだ危険かもしれない」が勝つ。

というのも、生き延びるために進化した原始的な脳は、不安や不快を敏感に察知することで危険を未然に防いでいました。

つまりは「死にたくない」という大きな動機がすべての言動の基本になるのです。

言い訳も怒りも嫉妬もマウントもいじめも、元をたどればこの「死にたくない」という動機から出てくるのです。

なぜ言い訳をするのか?

「死にたくないから」です。

なぜ嫉妬するのか?

「死にたくない」からです。

無意識下ではこの強い動機が常に働いています。

だから多くの人は言い訳をし、怒り、嫉妬し、人より上に立ちたがるのです。

まず必要なのは、行動でも解決でもなく、
脳のモードを戻すこと。
それは言うなれば、暴走する本能と、落ち着いている理性の間に「区切り線を引く」ような行為。

人は、脳の状態が変わらないまま思考しようとすると、迷路の中を同じ場所ばかり回り続ける。
だから、最初にするべきことはたった二つ。

気づくこと
緩めること

この順番が変わると、すべてが苦しくなる。
逆に言えば、このステップさえ踏めれば、頭の暴走はゆっくり静まっていく。

生存最適化システム(SOS)
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2020.00020/full
要約:脳は生存を最優先し、危険・脅威信号に過敏に反応する。
だから「安心より危険の可能性に注意し続けるクセ」がある。

ラベル化:今、私は不安な脳のモードにいる

不思議なことに、「気づく」という行為には大きな力があります。
例えば

「あ、今私、不安になっている」
「ぐるぐる思考モードに入ったな」

そう一言心の中でつぶやくだけで、ほんの少し距離が生まれる。
まるで自分の中に観察者が現れるような感覚。

これを永田理論では「ラベル化」と呼んでいます。

脳科学的に言えば、このラベル化が起きた瞬間、前頭前野が活動を再開し始める。
つまり、暴走中の原始脳の横に、冷静な司令塔が戻ってくる。

これを体験として感じたことがある人も多いと思います。

例えば、

・怒りで頭が真っ赤になった瞬間に「今、怒ってるな」と気づいたとき
・焦って息が荒いときに「あ、焦ってる」と認識できたとき

その一言で、急に落ち着き始めるあの感覚。

ラベル化は、感情や思考を止めるためのものではなく、
「私はそれではない」と距離を取るためのもの。

不安に飲まれているとき、それを自分そのものだと感じてしまう。
でも、本当は違う。

「私は不安を感じている」

「私は不安そのものだ」

この二つの差は、人生の居心地に影響する。

ラベル化の目的は、
不安を追い出すことではなく、
不安に支配されなくすること。

呼吸:原始脳の警報を下げるためのスイッチ

ラベル化で状況を認識したら、次のステップは「呼吸」。
呼吸は意識できる行為の中で、もっとも早く自律神経にアクセスできるスイッチ。

ぐるぐる思考が起きているとき、身体はうっすら戦闘モードに入っている。
肩が上がっていたり、胸が固くなっていたり、呼吸が浅く速くなっていたりする。

この状態を脳はこう解釈する。
「危険が近い。もっと警戒しろ」

だから、深くゆっくりした呼吸をすると、脳は逆にこう判断する。
「呼吸が落ち着いている=危険ではない」
これが原始脳を鎮める安全サインになる。

方法は難しくなくていい。
静かな場所である必要もない。

例えば、こんな感じ。

息を鼻から4秒吸う
息を止めずにそのまま長く6秒吐く

これを数回。

ポイントは、「吐くほうを長くする」こと。
息を吐く時間が長いほど、副交感神経が優位になり、体が安心モードに切り替わる。

実際、多くの人は吐くことが苦手だ。
不安が強い人ほど、息を吸う量が増えてしまう傾向がある。
吸おうとするほどパニックに近づく。
吐くほど落ち着く。

呼吸は、考えを止める道具ではなく、
思考と体を「今ここ」に戻すための合図。

深い呼吸をしていると、不思議と頭の中の音量が下がってくる。
原始脳のアラームランプが赤から橙へ、橙から白へと弱まっていく。

その静けさの中で、思考脳がゆっくりと戻り始める。
焦らなくていい。
そのペースでいい。

脳は敵じゃない。
ただ、守り方が少し不器用なだけ。

そう思えたら、不安との関係は変わっていきます。

扁桃体と不安反応
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK279322/
要約:恐怖・危険判断の中心。過敏化しやすい。
扁桃体が強いほど心は警戒モードになる。

少し生きやすくなる実践ステップ

ここまで読んで、「仕組みは分かったけど、結局どうしたらいいの?」と思ったかもしれません。
正直なところ、「ぐるぐる思考を完全にゼロにする魔法」はありません。

人間である限り、不安も迷いもついてくる。

ただ、日常の中で「少しだけ生きやすくする工夫」はできる。
それは、大きな人生改革ではなくて、ほんの小さな操作を、静かに積み重ねていくイメージに近いと思ってください。

ここでは、私の理論でいう「原始脳を暴れさせすぎないための、思考脳からの小さな声かけ」として、すぐ試せる二つのステップにしぼってみます。
完璧にやる必要はないので、「できそうなときに」「3分だけ」くらいの軽さで取り組んでみてください。

3分だけ意識的に「今やること」を決める

ぐるぐるしているとき、頭の中は「過去」と「未来」に引っ張られ続けています。
あのときの失敗、あの人の一言、来週の予定、もしもの最悪パターン。
逆に、「今ここ」で起きていることは、ほとんど意識に乗ってこない。

そこであえてやってほしいのが
「3分だけ、今やることを決める」
という小さなミッションです。

例えばこんな感じ。

・これから3分だけ、机の上のいらない紙を捨てる
・3分だけ、洗い物をする
・3分だけ、今日の予定を手帳に書き出す

ポイントは、「たった3分」と時間を区切ること。
そして、「大きな問題を解決すること」ではなく「手を動かせる小さな行動」に落とすことです。

ある人は、夜になると未来の不安が止まらなくなるタイプでした。
「この先の生活、大丈夫かな」「親の介護、どうなっていくんだろう」と、答えの出ない問いを頭の中で回し続けて、寝る前にはどっと疲れてしまう。

そこで、その人に提案したのが

「夜、ぐるぐるが始まったら、まず3分だけ“明日の朝にやること”を1つだけ書いて決める」

でした。
例えば
「8時に起きて、まず区役所のサイトだけ確認する」
「通帳を取り出して、残高だけ見る」
そんなレベルでいい。

すると不思議なことに、未来全体の霧のような不安が、少しだけ「明日の一歩」という形に変わっていきます。
原始脳にとっても「何も決まっていない不確実な未来」より
「とりあえず明日これだけはやる」という具体的な行動のほうが安心材料になる。

3分だけ今やることを決める。
それは、頭の中のカメラを「ぼんやりした未来」から「今ここ」に戻す、小さなピント合わせのようなものです。

思考を紙に出す=脳のメモリ開放

もうひとつのステップは、とてもシンプルです。
「頭の中で考えていることを、そのまま紙に吐き出す」こと。

ぐるぐるが続くとき、脳の中ではメモリがパンパンの状態になっています。
何度も同じ考えを読み込み直しているので、処理能力が足りなくなっている。
パソコンでいうと、タブを開きすぎて動きが重くなっている感じに近いです。

そこでやってほしいのが、「脳の外にタブを移す」という作業。
難しい書き方をする必要はありません。

ノートでも、裏紙でも、スマホのメモでもいいので、

「今、頭の中にある言葉」「不安」「気になっていること」を、順番も整えず、そのまま書いていく。

例えば

・明日の会議がこわい
・またうまく話せなかったらどうしよう
・あの人の表情が今も気になっている
・本当は転職したいけど、怖い
・お金の不安もある

こんなふうに、きれいにまとめようとせず、“頭の中の声の実況中継”をする感覚で出していきます。

ある人は、夜中に不安が爆発しそうになったとき、ベッド脇に置いてあるノートに全部書き出す習慣をつけました。
すると、「書いている途中で、なんだか同じことをずっと繰り返していたんだな」と気づき、ふっと力が抜けたと言っていました。

紙に出すことの効用は大きく分けて二つあります。

ひとつは、「見える形」にすることで、原始脳の中だけにあった漠然とした不安が、前頭前野に渡されること。
もうひとつは、「これだけ書いたから、今はここまででいいか」と区切りをつけやすくなること。

脳の中にだけ置いておくと、不安はいくらでも増殖するけれど、紙の上に出した瞬間、それは「外側のオブジェクト」になります。
眺めることができるものは、少し扱いやすくなる。

もちろん、書いたからといって問題が一瞬で解決するわけではない。
それでも、頭の中だけで抱えているときより、呼吸はしやすくなる。

思考を紙に出すことは、
「今すぐ全部解決しよう」とするのをやめて、
「とりあえず、脳の荷物を一部外に置いておく」行為です。

それだけでも、脳のメモリは少し空きができる。
その空いたスペースに、「楽しさ」や「安心」が入り込む余地が生まれてくる。

生きやすさは、こんな小さなスペースの積み重ねから始まっていきます。

長期的ケア:脳の習慣を書き換える

ここまでの話は、どちらかというと「今この瞬間の嵐をやり過ごすための方法」でした。
ラベル化したり、呼吸したり、3分のミッションを決めたり。
それだけでも、かなり楽になる人は多いと思います。

ただ、ぐるぐる思考が長年のクセになっている場合、
一度静まっても、また同じパターンに戻ってしまいやすい。
ここから先は、いわば「脳のリハビリ」の時間です。

脳には、「よく使う回路ほど太くなる」という性質があります。
不安の回路ばかりを使ってきたなら、その道は高速道路みたいに整備されている。
一方で、安心や楽しさ、穏やかな集中の回路は、草むらの細い小道みたいな状態かもしれません。

長期的ケアでやりたいことは、この小道を少しずつ踏み固めていくことです。
安心を「たまのご褒美」ではなく、「ふだんの標準」にしていく。

といっても、大げさなことをする必要はないです。
例えば、こんなふうに。

夜寝る前、スマホを見る前に、今日一日の中で「少しホッとした瞬間」を三つだけ思い出す。
朝起きて顔を洗ったあと、「今日はこれができたらよし」と、自分にとっての小さな合格ラインをひと言だけ決める。
不安が湧いたとき、「あ、原始脳が騒いでるな」とつぶやくところまでを“ワンセット”にしてしまう。

これを繰り返していると、脳は次第に学習します。

「不安が出てきても、すぐ人生終了ではないらしい」
「小さな安心を見つけると、一日全体はそこそこ悪くない」

ある人は、毎晩寝る前に
ノートの端っこに「今日の安心」とタイトルを書いて、
その日心がふっとゆるんだ瞬間を、短い言葉でメモする習慣をつけました。

・コンビニの店員さんの笑顔がうれしかった
・散歩中の空がきれいだった
・やる気が出なくても、とりあえず仕事に行った

最初の頃は、無理やりひねり出している感覚だったそうです。
でも数週間続けるうちに、「今日はどの場面を書こうかな」と、一日の中で安心を探す自分が出てきたと言っていました。

これは、
「原始脳の“危険探し”のクセを、“安心探し”と共存させる練習」でもあります。

危険に気づく能力をゼロにする必要はない。
むしろ、それは生きるために大事なセンサーです。
ただ、それだけがデフォルトになっていると、人生のほとんどが緊急事態になってしまう。

だから、長期的ケアのゴールは

危険も感じるけれど、
安心も同じくらい感じられる脳

に育て直すこと。

そのために役立つのは、「特別なことを年に一回ドーンとやる」より
「地味だけど、小さな安心の練習をほぼ毎日少しずつ続ける」ことです。

安心モードをデフォルトにするというのは
「もう二度と不安にならない自分になる」という意味ではありません。

不安になっても
「まあ、また原始脳がいつものパターンをやっているな」と気づけて
戻ってくる場所としての“安心”を、ちゃんと持っていられる状態。

その感覚が少しずつ育ってくると、
ぐるぐる思考は「人生を支配する主役」ではなくなり、
たまに出てくる癖の強い脇役くらいの位置に下がっていきます。

「こんな自分はおかしいのか」への答え

頭がぐるぐるしているとき、
多くの人は、不安そのものよりも

「こんなことを考え続けている自分はおかしいのでは」
「普通の人はもっとサッと切り替えられるんだろうな」

という自己否定のほうに傷ついていたりします。

ぐるぐるを止めたいのに止まらない。
そのうえ「止められない自分」を責めてしまう。
二重苦です。

ここで、いったん立ち止まってほしいことがあります。
それは、

「おかしい」のではなく、「がんばっている」だけかもしれない、という視点です。

性格が弱いからでも「甘えている」わけでもない

子どもの頃から
「泣かないほうがいい」
「弱音を吐くな」
「くよくよするな」

こういう言葉をたくさん浴びてきた人ほど、ぐるぐる思考を「性格の弱さ」と結びつけやすいです。

でも、ぐるぐるしてしまう人ほど、実は真面目で責任感が強いことが多い。
失敗した出来事を丁寧に振り返る。
相手の気持ちを想像しすぎるくらい考える。
仕事も人間関係も、ちゃんとやろうとする。

その「ちゃんとしよう」が積み重なりすぎて、ある日、脳がキャパオーバーになる。
その結果として、頭がぐるぐるし続ける。

私の考えでは、
原始脳の「危険を見逃さないように」という機能と、
あなたの真面目さが、ちょっと不器用なタッグを組んでしまっている状態です。

だから、ぐるぐるしてしまう自分に対して

「私はなんてダメなんだ」ではなく
「ここまで考えちゃうくらい、ちゃんと向き合おうとしてきたんだな」

と見方を変えてみると、少し空気が変わります。
自分へのツッコミの言葉が、ほんの少しだけ優しくなる。

それだけでも、原始脳の警戒音は少し下がります。

ポジティブ思考やスピリチュアルで無理に上書きしなくていい

もうひとつ、よくある誤解があります。

「ネガティブなことを考えるからいけないんだ」
「もっと感謝しなきゃ」
「引き寄せがうまくいっていない」

そうやって、ポジティブな言葉やスピリチュアルな考え方で、不安を上書きしようとするパターンです。

もちろん、前向きな考え方そのものが悪いわけではないです。
ただ、原始脳が全力で警報を鳴らしているときに、
表面だけポジティブな言葉を貼り重ねても、奥のほうでこんな抵抗が起きます。

「本当は怖いのに、無理にごまかそうとしている」
「この違和感のほうが危ないかもしれない」

結果として、不安とポジティブが引っ張り合い、余計に疲れてしまう。

大事なのは、「不安を感じてはいけない」と扱うことではなく、
「不安もあるよね」と一度認めてから、
そのうえでどうしたいかを選び直すことです。

原始脳の声を無視してポジティブで塗りつぶそうとするのではなく、
一度その声を聞きとったうえで、
思考脳が静かにハンドルを握り直す。

この順番を間違えなければ、
ポジティブな言葉も、スピリチュアルな考え方も、
ちゃんと味方になってくれます。

日常生活からできる「ぐるぐる予防」

ここまでの話は「ぐるぐるが起きたときの対処」でした。
少し視点を変えて、
「そもそも、ぐるぐるが暴走しにくい日常の整え方」も見ておきます。

特別なことではなく、
ほんの少しだけ、原始脳が安心しやすくなる環境づくり。
これをしておくだけでも、ぐるぐるの“振れ幅”は変わります。

睡眠とスマホとの付き合い方

頭がぐるぐるしている人の多くに共通するのが、
「眠る直前までスマホで情報を浴び続けている」ことです。

ベッドの中で、SNSやニュース、動画を眺め続けていると、
原始脳はずっと刺激を受け続けます。
他人の怒り、悲しみ、成功、失敗、事件、炎上。

原始脳は画面越しの情報でも本気で反応するので、
「世の中は危険と比較だらけだ」と判断しがちになる。
そのまま眠りに入ろうとするから、
寝つきも浅く、夜中にふと目が覚めたとき、頭が一気に活動を再開してしまう。

できれば、寝る前30分だけでも、スマホから距離をとってみてほしいです。
難しければ、最初は10分でもいい。

代わりにやることは、なんでもかまいません。

湯船にゆっくり浸かる
好きな香りをかいでみる
今日一日をざっくり振り返る

「情報を入れる時間」から「自分の内側に戻る時間」に切り替える。
それだけで、原始脳の興奮はじわじわと下がります。

睡眠は、脳にとっての「長時間メンテナンス」です。
ここが削られると、前頭前野は回復しきれず、翌日の不安モードが入りやすくなる。

もし、寝つきや眠りの浅さが続いているなら、
寝具や枕を少し見直してみるのも一つの方法です。
身体がリラックスしやすい環境を整えることは、
原始脳に「今は安全だよ」と伝える、静かなメッセージになるからです。

体を動かすことは、考えすぎのブレーキになる

ぐるぐるしているとき、頭は全力で動いているのに、体は固まっています。
肩や首はガチガチ、呼吸は浅くて早い。
このアンバランスさが続くと、脳はさらに混乱します。

「身体が固まっている=危険に備えている最中だ」と判断してしまうからです。

そこで、難しい運動ではなくていいので、「体を動かす」という選択肢を増やしてほしい。

例えば、

駅や職場でエスカレーターではなく階段を使う
家の中で肩を大きく回して伸びをする
外に出て、近所を5分だけ歩く

たったそれだけでも、
脳は「逃げられるだけの体力がある」と判断し、
危険の評価を少し下げます。

「頭の中だけでサバイバルしている状態から、体も一緒に現実に参加させる」イメージです。

ある人は、考えすぎてつらい日ほど、あえて夜にコンビニまでの散歩を日課にしました。
「とりあえず、アイスを買って帰ってくる」
この小さなルールをつくることで、
頭の中に閉じ込められたストレスが、少しずつ体の動きとして外側に流れていったそうです。

ぐるぐる思考を止めるためにやる、というより、
「頭ばかりに集中しすぎたエネルギーを、全身に分散させる」感覚に近いかもしれません。

どこまでが「よくある悩み」で、どこからが「専門家レベル」か

ここまでいろいろ書いてきましたが、
中には「自分の場合はもう、セルフケアだけではきついかもしれない」と感じている人もいるかもしれません。

ぐるぐる思考や不安は、多かれ少なかれ誰にでもあります。
けれど、あるラインを超えると、
ひとりで抱え続けること自体が、心身への負担になってしまう。

その境界は、「症状そのもの」よりも
「生活への影響」で見てあげると分かりやすいです。

H3 こんな状態が続くなら、一度相談してほしい

あくまで目安ですが、例えばこんな状態が続いているなら、
一度、心療内科や精神科、カウンセリングなど専門家に相談してほしいです。

・不安やぐるぐる思考が、ほぼ毎日のように続いている
・眠れない、夜中や早朝に何度も目が覚める日が多い
・食欲が極端に落ちた、または過食が止まらない
・好きだったことにも興味が持てなくなってきた
・仕事や家事、人付き合いなど、日常生活に大きな支障が出始めている
・「消えてしまいたい」「いなくなったほうが楽だ」とよく思う

これが数日ではなく、数週間から数か月続くようなら、
それは「あなたが弱いから」ではなく、
脳と心が本格的に疲れているサインかもしれません。

私の視点で言えば、
原始脳の警報が長期間鳴りっぱなしで、
思考脳もエネルギー切れを起こしている状態です。

このレベルまで来たら、
自力で何とかしようと頑張り続けるより、
外部のサポートを使うほうが、回復は早くなります。

というのも、この状態が長く続くと、脳の機能自体が落ちてしまうからです。

相談するときに伝えると役に立つこと

もし相談に行くときには、
何をどう話せばいいか分からない、という不安も出てくると思います。

そのときは完璧に話そうとしなくて大丈夫です。
箇条書きでもいいので、事前にメモにしておくと少し楽になります。

例えば、

・いつ頃から、どんなぐるぐる思考が増えたか
・眠りや食欲、仕事への影響はどう変わったか
・一日の中で特にしんどい時間帯
・これまで自分なりに試してみたこと

このあたりが少し伝えられるだけでも、
相手はあなたの状態をイメージしやすくなります。

心理カウンセリングを使うのもひとつの手です。
「話すだけで変わるのかな」と思うかもしれませんが、
自分の頭の中のぐるぐるを、安心できる場所で言葉にしていくことは、
思考を紙に書き出すのと同じように、
脳のメモリを空けていく作用があります。

もし、信頼できそうなカウンセリングサービスや、
相性の良さそうなカウンセラーと出会えたなら、
「原始脳が暴走しやすい自分」との付き合い方を、見つかるかもしれません。

最後にもう一度:人生は「問題をゼロにするため」だけのものではない

ここまで、ぐるぐる思考の仕組みや対処法、
日常でできる工夫や、専門家に頼るタイミングのことを書いてきました。

少しだけ、原始脳の不器用さが愛おしく思えてきたでしょうか。
それとも、「いや、まだ正直しんどいよ」という感じでしょうか。

どちらでも大丈夫です。

私がお伝えしたい根っこにあるのは、

人生は「問題を完全に消すため」ではなく、
「問題を抱えながらも、どう楽しんでいくかを試行錯誤する時間」

という視点です。

ぐるぐる思考があるからこそ、
人の痛みに気づけたり、
慎重さが必要な場面で冷静に考えられたり、
失敗を糧にする力が育ったりすることもあります。

もちろん、しんどいものはしんどい。
だからこそ、「原始脳の暴走」と「思考脳の静かな力」の両方を知っておくと、
少しだけ身軽に、生きていける。

今日、この文章をここまで読んだこと自体が、
あなたの思考脳がちゃんと働いている証拠です。
原始脳に飲み込まれながらも、どこかで「このままは嫌だ」と感じて、
新しい視点を取り入れようとしている。

それはもう、小さな一歩どころか、
かなり大きな一歩だと、私は思っています。

これからも、
ぐるぐるする日もあれば、
少し楽な日もあって、
また揺れ戻ることもあるはずです。

そのたびに、
「あ、原始脳がまた全力で守ろうとしてくれているな」
「よしよし、ありがとう。でも今日は、思考脳にもしゃべらせてあげよう」

そんなふうに、自分の中の二つの脳と対話していけたら、
人生は今より少しだけ、軽く、面白くなっていきます。

問題をゼロにできなくても、
「人生楽しんでナンボ」という感覚は、
ゆっくりじわじわ、あなたの中に根を張っていきます。

ぐるぐる思考は、「あなたの心が壊れているサイン」ではない。
本能が、あなたを必死に守ろうとしているだけだ。

原始脳と少し距離がとれると、思考脳が静かに戻ってくる。
今日すぐできる一歩は、「止めようとしないこと」。
ただ気づく。それだけでいい。

あなたは、生き延びるためではなく、人生を楽しむためにここにいる。
そのことを、少しずつ思い出していけばいい。

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